RESEARCH TEAMS
G-TES
(General Therapeutic Electrical Stimulator therapy)
GTES
目的:
ベルト式電極を下肢に装着し,電気刺激を行うことで筋収縮を誘発させ,下肢筋力増強や筋肥大,骨格筋機能を改善させる目的で
実施しています.ご高齢の方や重度の運動障害,呼吸器疾患などにより積極的に運動療法が実施できない患者様に対してG-TESを用いています.
現在までの経過:
重度慢性閉塞性肺疾患の患者さまに対して1ヶ月間のG-TESを実施し筋力や筋量,呼吸困難感,運動パフォーマンスなどの変化を検証しています.通常呼吸リハビリテーション群と,通常呼吸リハビリテーション+G-TES群に分けて効果検証を行ったところ,両群ともに筋力や筋量,呼吸困難感,運動パフォーマンスに改善が見られましたが,2群間で有意な差は見られませんでした.G-TESの実施期間が1ヶ月と短いことから,今後はより長期の期間で効果検証をしていきたいと考えています.
PNS(Peripheral Nerve Stimulation therapy)
目的:
脳卒中は,運動麻痺や感覚,バランスなど障害を引き起こし,ADLやQOLの低下を招きます. 中枢神経疾患を持つ患者様の歩行能力
改善はリハビリテーションの重要な目標となります.これらの障害に対して,末梢神経に電気刺激を行うPNS(Peripheral Nerve Sensory electrical stimulation)では運動感覚関連野の興奮性増大や運動学習効果促進が報告されております.さらに,運動療法と併用するhybrid療法が,より改善をもたらす事で注目されており,下肢筋力,歩行速度,上肢巧緻性の改善が報告されています.しかし,先行研究では運動療法前に60分程度の電気刺激を行うものが多く,臨床場面で実現するのは時間的課題が挙げられます. そこで当院では,運動療法とPNSを同時併用した介入方法を提案し,リハビリテーション介入中に60分間の大腿神経と脛骨神経に電気刺激を行い,運動療法と組み合わせたリハビリテーション効果を検討しています.
現在までの経過:
限られた入院期間の中でより効果的に機能回復,動作能力の改善が可能となるよう運動療法とPNSを併用して介入を実施しています.現在10例に対して介入を行い,その結果バランス能力に関して効果的な傾向を示しています.しかし、回復期リハビリテーション病棟ということもあり,約2ヵ月間の長期間の介入では介入方法や運動量が一定していません.そのため,できる限り介入方法,運動量によるバイアスを取り除き,運動療法とPNSの同時併用の効果を示すことができるよう検討しています.
Lower Limb Orthosis
装具
目的:
意識障害や四肢麻痺を呈した重度脳卒中者は,長下肢装具のみでは十分な歩行練習を行うことが困難となる場合があります.そのような全介助レベルの症例に対して,体幹付き両長下肢装具(THbKAFO)は身体活動量や歩行距離を確保するために有用であると報告されています.しかし,先行研究ではTHbKAFOを使用した歩行練習が身体機能やADLへ与える影響は検討されておらず,重度脳卒中患者における介助歩行の効果は明らかとなっていません.本研究の目的は重度脳卒中者におけるTHbKAFOを使用した歩行練習の臨床効果を検討することです.また,装具療法において短下肢装具の効果は報告されているものの,長下肢装具を使用したリハに対するエビデンスはまだ不十分である.そこで,長下肢装具を使用している患者様のリハ経過やカットダウン有無に関連する要因についても検討しています.
現在までの経過:
現在15例に対して入院時から覚醒,身体機能,ADL評価を用いて縦断的な評価を実施しています.入院時と比べて2ヵ月後には意識障害は改善される傾向がみられましたが,一方で身体機能やパフォーマンス評価における変化は得られにくい傾向を認めています。長下肢装具においては,装具を用いた介入効果や短下肢装具へのカットダウン有無に関連する因子についての調査を進めている段階です.
AR2(Arm Rehabilitation Robot therapy)
目的:
脳卒中後,2/3以上の症例が上肢運動機能障害を有し日常生活動作の自立が困難になっています.脳卒中ガイドラインでは,特定の動作の反復を伴った訓練を行うことが推奨されており,近年高強度に課題特異性練習を提供することができる様々なロボットが開発されています.今回開発された上肢リハビリ装置(Arm Rehabilitation Robot;AR2)は,麻痺側上肢の自重を免荷した状態で繰り返しリーチ動作を行うことが可能であり,動作中に振動刺激や電気刺激を併用することでその効果をより高める反復促通法をコンセプトとした機器です.脳卒中後の上肢機能に対するロボット介入のメタアナリシスでは,回復期リハビリテーション病棟において亜急性期症例には効果的ではないと報告されていますが,一方で論文数が少ないことやロボットの形状によって効果が違うことが指摘されており,機器別に効果の有無を検証する必要があります.これらのことから,本研究は亜急性期脳卒中症例の麻痺側上肢機能に対するAR2の効果を検証しています.
現在までの経過:
現在,9名の脳卒中症例に対してAR2の効果を検証しました.先行研究ではロボットを用いたアプローチは日常生活活動に対して直接的な影響を与えないとの報告があり,本研究でも日常生活での麻痺側上肢の使用頻度に変化は認められませんでした.一方で麻痺側上肢の運動機能に関して,中等度以上の運動麻痺を呈した患者様の肩関節に機能的改善を認める傾向を認めました.
AR2
Attention
attension
目的:
半側空間無視は右半球損傷患者に好発する神経学的症候群です.半側空間無視に対しての評価法は,従来机上での評価のみであり,能動的注意の評価しかできませんでした.しかし,@attentionでは受動的注意の客観的評価が可能であり,眼球運動を測定することで無視側への視野軌跡も評価することが可能となっています.これらのことから,回復期リハビリテーション病棟の右半球損傷の脳卒中症例を対象に,attentionを用いて注意機能や視線推移の評価を実施しています.
現在までの経過:
当院へ入院された脳卒中患者様を対象に@Attentionを実施し,得られたデータを後ろ向きに調査しました.結果,左病巣に比べ右病巣の方が左右比が大きいことがわかり,左半側空間無視は右よりも左右の反応時間の差が大きい可能性があることが示唆されました.
脳卒中以外の疾患を呈した患者様にも@Attentionを評価・治療機器として導入しており、症例ごとの経過も追っています.
VR(Virtual Reality)
目的:
VR技術はリハビリテーション分野において,脳卒中,脊髄損傷などの疾患や身体・心理機能の改善を目的に臨床導入されています.現在までのVR介入は二次元での技術が使用されていましたが,未だVR技術の効果について明確なエビデンスは得られていません.また近年では3次元でのVR技術の効果が検証され始めています.しかし,こちらも治療効果のエビデンスは不十分となっています.今後,VR技術における臨床での適応と限界を調査し,適した介入方法を明確にすることが課題となっています.これらのことから,本研究は回復期リハ病棟入院中の患者様に対してVR技術を用いたリハ効果を検証しています.
現在までの経過:
現在,35例に対して原則的に,標準リハを1か月以上行った時点でVR介入を追加し,身体機能,認知機能,精神・心理面に対する評価を実施しています.VR介入は有害事象なく遂行可能であり,VR介入前と比較して,注意機能,歩行能力,バランス能力の改善に寄与する傾向を認めています.
VR
CI(Constraint - Induced movement therapy)
CI
目的:
1.脳卒中後上肢麻痺を呈した症例に対して,回復期リハビリテーション病院でも実施可能な修正CI療法のプロトコールを作成し,
その実施可能性を検討する.
2.比較的短時間で実施した修正CI療法の治療効果の有効性を検討する.
現在までの経過:
CIチームは,回復期リハビリテーションにおいてエビデンスの確立された手法です.当院ではCI療法を導入するべく,1日40分の集中訓練を週5日,10週間継続して実施する修正CI療法を適応しています.その結果,複数の症例で上肢運動機能に良好な結果が得られております.今後は,通常のリハビリテーションと比較した修正CI療法の有効性を検討します.