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研究所設立の思い
リハビリテーション(以下,リハ)医学分野におけるエビデンスは他領域に比して明らかに不足しており,既存のエビデンスを受け身の姿勢で活用するだけでは,すべての患者様において最大のアウトプットを実現し、最高のご満足いただくことは難しいかもしれません.医学は日々進歩しており,未知の介入効果を検証し,新たなエビデンスを構築していくことも我々臨床家の重要な使命であると私どもは考えております.
これまで弊院リハセンターでは,複数の研究チームを構成し,日常的臨床業務と並行して臨床研究活動に励んで参りました.私どもの臨床研究活動は丸3年を迎え,査読英語論文は2本,査読和文論文は2本,学術大会発表は64演題という実績を残すことができました.我々はこの数字に決して満足しているわけではありません.それぞれの研究の質を上げ,よりエビデンスの構築に繋がるような研究活動を行うべく,脳科学リハ分野の大家である森岡教授をブレーンとしてお迎えし,「岸和田リハビリテーション病院 脳卒中リハビリテーション研究所」を昨秋に設立いたしました.“脳卒中”だけに拘泥するわけではございませんが,弊院では過半数が脳血管疾患の患者さまです.可塑性の乏しい,すなわち回復が難しいとされる中枢神経系が障害されることにより運動麻痺や運動失調など,整形外科術後や集中治療後の廃用症候群のなどの患者さまとは一線を画する機能損失は,大きく患者さまのA D LとQ O Lを低下させ,リハ自体にも困難な側面が数多くあります.しかし難しいがゆえに,やりがいもあり,そこには多くのClinical Questionsが存在し,その解決は多くの脳卒中患者さまへ福音をもたらすことでしょう.
当面の目標として,あらたな査読英語論文のpublishを目指します.また,臨床研究活動によって得られた知見は,日常臨床に活用し,また私どものセラピストが既存のエビデンスを批判的に吟味することができる姿勢の教育にも役立たせます.また院内のみならず,研修会・講演会などの開催などによって,地域住民の皆様や地域で働く他のセラピストの皆様にも共有させていただければと存じます.
2020年6月29日
脳卒中リハビリテーション研究所
所長 石川 秀雄